文系1年目〜 対応 / 実例で学ぶK8s活用

📡 楽天モバイルの
クラウド基盤をやさしく理解する

「世界初の完全クラウドネイティブ5G網」がどう動いているか、K8sの知識を使って読み解こう

📡 楽天モバイルの何がすごいの?

ひと言でいえば「世界で初めて、スマホの電話網をKubernetesで動かした会社」です

🌏 世界初の快挙:
2020年、楽天モバイルは世界で初めて「携帯電話のネットワーク全体」をクラウドネイティブ(Kubernetes)で構築しました。

従来の携帯会社はドコモもKDDIも、ネットワーク機器メーカー(エリクソン・ノキア等)の専用ハードウェアに依存していましたが、楽天は普通のサーバーとソフトウェアだけで同じことを実現しました。
📦 従来の携帯会社(ドコモ・KDDI等) エリクソン製 専用機器 ノキア製 専用機器 NEC製 専用機器 ・高価な専用機器に依存(1社から買い続ける必要) ・アップデートに数年かかる ・故障したら同メーカーしか修理できない VS ☸️ 楽天モバイル(クラウドネイティブ) 普通のサーバー + K8s 普通のサーバー + K8s 自動で 増やせる ・汎用サーバーなのでコスト大幅削減 ・ソフトウェア更新で機能追加が自在 ・K8sが自動で障害復旧・スケールを管理

従来は高価な専用機器を買い続ける必要があったが、楽天は普通のサーバー+K8sで同等の機能を実現

🔄 従来の携帯網と何が違うのか

「ハードウェア中心」から「ソフトウェア中心」への大転換を見てみましょう

❌ 従来の携帯ネットワーク

  • エリクソン・ノキアなど特定メーカーの専用機器が必要
  • 基地局1つ増やすには現地に人が行って機器を設置
  • 設備コストが非常に高い(ネットワーク費用がコスト全体の50%以上)
  • 機器のアップデートに数年かかる
  • ベンダーロックイン(1社に依存し続ける状態)
  • 障害時は専用機器の交換が必要

✅ 楽天のクラウドネイティブ網

  • 汎用サーバー(普通のPC的なもの)の上でソフトウェアが動く
  • 基地局の追加はソフトウェアをデプロイするだけ(4分!)
  • 汎用サーバーで安くなり、コストが大幅削減
  • ソフトウェア更新なので週単位で機能追加可能
  • 複数メーカーの製品を自由に組み合わせられる
  • K8sが自動で障害を検知し、Pod を再起動して復旧
🏭 工場で例えると:
従来 → 「部品A社の機械でしか作れない製品」を「A社の機械ごと」買い続ける
楽天 → 「汎用の工作機械」を並べて、「ソフトウェアのプログラム」を書き換えるだけでどんな製品も作れる

⚙️ なぜ Kubernetes を使うのか

携帯電話のネットワーク運用でK8sが活きる理由を見ていきましょう

📈 朝夕のアクセス急増 通勤時間帯に一斉に スマホを使い始める ↑ K8sが自動でPodを増やす 💥 基地局の障害 ある基地局の ソフトウェアが停止 Pod💀 自動で新Pod起動 → K8sが自動検知・自動復旧 🚀 新機能のリリース 5G新機能を全国の 基地局に展開 v2 ✅ v2 ✅ v2 ✅ → 全国に少しずつ無停止展開 ☸️ すべての課題をKubernetesが解決する HPA(自動スケール) 負荷に応じてPod数を自動増減 自己修復(Self-healing) 障害Podを即座に自動再起動 ローリングアップデート 全国基地局をサービス停止なしで更新

携帯ネットワーク特有の3つの課題すべてにK8sが対応している

K8sを採用した具体的なメリット

🏗️ ネットワークの仕組み(全体像)

スマホの電波がどのようにクラウドを通って通話・通信になるか、図で見てみましょう

📱 スマホ 〰〰〰〰 📡 RAN層 (基地局) vDU 電波の送受信処理 vCU 接続の制御・管理 K8s Pod として動作 Open RAN (オープン規格) で複数メーカー対応 🧠 コアネットワーク (通話・通信の頭脳) AMF 端末の接続・認証管理 SMF データ通信の経路管理 UPF 実際のデータ転送 すべてK8s Pod として動作 Red Hat OpenShift上 🖥️ 管理・運用層 (自動化の司令塔) Orchestrator 全K8sクラスタを統合管理 OSS/BSS 業務システム・課金管理 AI自動化 障害予測・省電力化 Symworld (楽天独自) 🌐 インター ネット RAN・コア・管理、すべての層で Kubernetes Pod としてアプリが動いている

スマホの電波(左)からインターネット(右)まで、すべてK8s Podが処理している

💡 見慣れない用語の解説

用語正式名称やさしい説明
Open RANOpen Radio Access Network基地局の仕様をオープンにして、どのメーカーの機器でも組み合わせて使えるようにする規格。「部品を自由に選べる」
vDU / vCUvirtual Distributed/Central Unit基地局の機能をソフトウェア化したもの。vDUが電波処理、vCUが接続管理を担当。K8s Pod として動作する
AMF / SMF / UPF5Gコアの機能名5Gの「頭脳」を構成する部品群。それぞれ「端末認証」「経路決定」「データ転送」を担当するK8s Pod
OSS / BSSOperations/Business Support Systemネットワーク運用の管理システムと、課金・契約などの業務システム。楽天はこれもK8sで動かしている
Orchestrator
(オーケストレーター)
複数のK8sクラスタをまとめて管理する上位の司令塔。楽天は「Symworld Orchestrator」という独自ツールを開発

📊 どのくらいの規模で動いているの?

数字で見ると、その圧倒的なスケールが実感できます

50,000台以上
物理サーバー数
6,000本以上
CI/CDパイプライン
(週単位で実行)
4
新基地局の
立ち上げ時間
20%削減
RAN消費電力の
削減率(AI連携)
約50拠点
地域データ
センター数
100万以上
Symworld管理
要素数
🤔 この規模感をわかりやすく言うと?

5万台のサーバーすべてで K8s が動いています。一般的な企業の大規模システムでも数百〜数千台規模なので、その10〜100倍のスケールです。

また毎週6,000本のCI/CDパイプラインが動くということは、毎週数千の機能追加・修正が自動でテスト&デプロイされているということです。

🏆 世界からどう評価されているか

通信業界の主要アワードを次々に受賞し、「世界の手本」になっています

2021年
🥇 GSMA GLOMO Awards 2冠
「Best Mobile Technology Breakthrough」「CTO Choice: Outstanding Mobile Technology」をKubernetes上の5G Open RANで受賞。業界最高の栄誉。
2021年
🥇 Glotel Awards 2冠
「Ground-breaking Virtualization Initiative」「Best Operator 5G Innovation」を受賞。通信業界で最も革新的な仮想化事例として認定。
2024年
🏅 GigaOm Radar 認定
Kubernetes エッジコンピューティング分野で「Leader & Fast Mover(業界リーダー)」に認定。
2025年
🏅 Tech Ascension Awards
楽天クラウドネイティブストレージが「エンドツーエンド自動化」「使いやすいUI」で受賞。
2026年
🌏 TM Forum 世界初認定
商用Open RANネットワークでのRAN省電力化により、世界で初めて「自律型ネットワーク レベル4」に認定。
継続中
🌍 業界の手本として注目
ドイツテレコム・Vodafone・AT&Tなど世界の大手通信会社が楽天のアーキテクチャを参考にし始めている。
📌 なぜここまで注目されるのか?
楽天が証明したのは「携帯電話のネットワークをクラウドネイティブで動かすことが実際に可能」という事実です。
「理論上は可能かも」から「実際にやった会社がある」に変わったことで、世界中の通信会社が追随を検討し始めました。

💼 知見をビジネスに:Rakuten Symphony

楽天モバイルの技術を世界中の通信会社に販売するビジネスも生まれました

📡 楽天モバイル K8s基盤を 自社で構築・運用 ノウハウを蓄積 技術を パッケージ化 🎵 Rakuten Symphony 楽天の子会社 Symworld(統合管理ソフト) K8s自動化ソリューション AI省電力化プラットフォーム ドイツテレコム Vodafone(英国) 新興国の通信会社 💰 世界の通信会社に 楽天の技術を販売 → ネットワーク事業の コスト削減を支援

自社で培ったK8s基盤の知見を「Rakuten Symphony」としてビジネス展開している

💡 なぜこれがビジネスになるのか?
世界中の通信会社が「楽天みたいに安くネットワークを作りたい」と思っていますが、自分たちでゼロから構築するのは難しい。そこで楽天が「うちのシステムを使えばできますよ」と販売しているわけです。 まるで「自社の工場システムをパッケージ化して他社に売る」ようなビジネスモデルです。

❓ よくある疑問

Q. 楽天モバイルが他社より安い理由はここにあるの?
大きな理由のひとつです。ドコモやKDDIはエリクソン・ノキアなど特定メーカーの高価な専用機器に依存していますが、楽天は汎用サーバー+Kubernetesで同じことを実現しているため、ネットワーク設備コストが根本的に安くなっています。

ただし、楽天モバイルは現在も基地局整備など多額の投資が続いているため、コスト優位性はまだ完全には利益に結びついていない部分もあります。
Q. 「Open RAN」って名前はよく聞くけど、K8sと何の関係があるの?
Open RAN は「基地局の部品仕様を公開して、どのメーカーでも作れるようにしよう」という規格・考え方です。

K8s は「そのオープンな部品をコンテナ化して自動管理する」ための基盤です。セットで使うことで「安くて・自動化された・マルチベンダー対応の基地局」が実現します。

つまり Open RAN が「何を作るか(設計思想)」で、Kubernetes が「どう動かすか(実行基盤)」です。
Q. 「自律型ネットワーク レベル4」って何がすごいの?
通信ネットワークの「自動化レベル」は0〜5で定義されています。

レベル0:手動対応のみ
レベル1:ツールのサポートあり
レベル2:一部自動化
レベル3:条件付き自律(人の監視が必要)
レベル4:高度自律(ほぼ自動。人は方針だけ決める)← 楽天が達成
レベル5:完全自律(人間の介入ゼロ)

レベル4を商用ネットワークで達成したのは、2026年時点で楽天が世界初です。
Q. 楽天の技術は日本だけで使われているの?
いいえ。楽天シンフォニー(Rakuten Symphony)というグループ会社が、この技術をパッケージ化して世界中の通信会社に販売しています。

ドイツテレコム、Vodafone UK、また多くの新興国の通信会社が楽天のKubernetes基盤ソリューションに関心を示しています。

楽天モバイルは「日本の携帯会社」であると同時に、「世界向けの通信インフラ技術会社」でもあります。
Q. 5Gと4G(LTE)でK8sの使い方は違うの?
基本的な考え方は同じですが、5Gになるとよりクラウドネイティブの恩恵が大きくなります。

4G:コアネットワーク部分を仮想化(VNF)するのが一般的
5G:コアネットワーク+基地局(RAN)をまとめてコンテナ化(CNF)し、K8sで管理できる

楽天は5Gの設計思想に最初からクラウドネイティブ・K8sを採用したため、従来の4G設備を持つ会社より5G移行コストが低くなるメリットもあります。