🎯 一言でいうと、どんな関係?
最初にシンプルな答えを押さえましょう
📌 結論:OpenShift は「Kubernetes をベースに、企業向けの便利な機能を大量に追加したパッケージ製品」です
Kubernetes(K8s)は土台となるオープンソースのソフトウェア。
OpenShift はその上にRed Hat(レッドハット)社が企業向けの機能・サポート・セキュリティを乗せた商用製品です。
OpenShift の中には必ず K8s が動いています。
Linux カーネル = K8s、Ubuntu/RHEL = OpenShift/Rancher という対比で理解できる
🚗 車で例えると:
K8s = エンジン(性能は高いが、自分で車体・シート・ハンドルを取り付ける必要がある)
OpenShift = 完成した高級車(エンジンは同じK8s。でも安全装置・ナビ・保証がすべて付いてすぐ乗れる)
🏗️ OpenShift の「層」の構造
OpenShift が K8s の上にどんな層を重ねているか見てみましょう
青い層がK8sそのもの。赤い層がOpenShiftが上乗せした機能
➕ K8s に何が追加されているの?
「素のK8s」と「OpenShift」の具体的な違いを一つひとつ見ていきます
🔒
セキュリティが最初から厳格
素のK8sはセキュリティ設定が緩め。OpenShiftは「最初からガチガチに固めてある」状態で出荷される。SCC(権限制御)が強力。
🖥️
ブラウザの管理画面(UI)
素のK8sはコマンド操作が基本。OpenShiftはブラウザで全操作できる管理コンソールが標準搭載。
🚀
自動ビルド&デプロイ
コードをGitに push するだけで、自動でコンテナ化→テスト→デプロイまで流れる仕組みが標準で入っている(CI/CDパイプライン)。
📊
監視ツールが最初から入っている
Prometheus(データ収集)、Grafana(グラフ表示)などが設定済みで最初から使える。素のK8sでは自分で入れる必要がある。
📦
Operator(自動運用ロボ)
データベースやミドルウェアの運用を自動化する「Operator」が豊富に用意されている。アップデートや障害対応を自動化できる。
🛡️
Red Hat の企業サポート
24時間365日の技術サポートが受けられる。素のK8sは自力でトラブル解決が必要。大企業には必須。
OpenShift = K8s + Red Hatが追加した企業向け機能 の組み合わせ
⚖️ K8s と OpenShift、どちらを使うべき?
向いているシーンが違います。使い分けの判断基準を整理しましょう
☸️ 素の Kubernetes が向いているケース
- エンジニアが多く、自分たちで設定・カスタマイズできる
- コストを最小限に抑えたい(OSS で無料)
- AWS EKS / GKE / AKS などマネージドK8sを使う
- 自社独自のツール構成にしたい
- スタートアップや小〜中規模のシステム
🎯 OpenShift が向いているケース
- セキュリティ基準が厳しい(金融・医療・通信など)
- K8sの専門家がいない、サポートが必要
- 管理UIで運用チームが操作したい
- CI/CD・監視まで含めてまとめて導入したい
- 大企業・ミッションクリティカルなシステム
| 比較軸 | 素のKubernetes | OpenShift |
| コスト |
OSS なので無料 (運用・学習コストは別途) |
有償(サブスクリプション) Red Hatへのライセンス料が必要 |
| セキュリティ |
自分で設定が必要 デフォルトは緩め |
最初から厳格な設定済み 金融・通信レベルに対応 |
| 管理UI |
なし(Dashboardは別途) |
高機能なUIが標準搭載 |
| CI/CD |
別途 Jenkins等を自分で構築 |
Tekton / ArgoCD が標準搭載 |
| 監視 |
Prometheusなどを自分で構築 |
Prometheus / Grafana が標準搭載 |
| サポート |
コミュニティのみ |
Red Hat による24時間365日のサポート |
| カスタマイズ性 |
非常に高い(何でも自由) |
やや制約あり(安定性のため) |
| 主な利用者 |
テック系スタートアップ、クラウドネイティブ企業 |
大企業・通信・金融・医療・政府機関 |
💡 わかりやすいたとえ:
K8s = Linux カーネルのソースコード(無料だが、自分でOSを組み立てる必要がある)
OpenShift = Red Hat Enterprise Linux(RHEL)(有料だが、すぐ動く・サポートあり・企業保証つき)
Red Hat は Linux で同じ戦略をとっている会社です。K8s版でも同じモデルを採用しました。
📡 楽天モバイルが OpenShift を使う理由
楽天モバイルのK8s基盤は Red Hat OpenShift の上で動いています。なぜでしょうか?
楽天モバイルの厳しい要件をすべてOpenShiftが満たしているため採用された
Red Hat(レッドハット)とはどんな会社?
🏢
企業概要
1993年創業のアメリカの企業。Linux の商用サポートで成長し、現在は IBM 傘下。売上の大部分がオープンソースの商用サポート。
🐧
RHEL(Linux)で有名
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は世界の大企業・政府・金融機関が使う信頼性の高いLinuxディストリビューション。
☸️
OpenShift で K8s 市場へ
K8sが登場するとすぐに、「RHEL でやったのと同じモデル」でK8sの企業版を作った。それが OpenShift。
🤝
Kubernetes コア開発にも参加
Red Hat は Kubernetes のコア開発チームにも大勢のエンジニアを送り込んでいる。OSS の発展にも貢献。
📦 OpenShift の製品バリエーション
OpenShift にはいくつかのバリエーションがあります。名前を聞いたときに混乱しないよう整理しておきましょう
| 製品名 | 動く場所 | どんな場合に使う? |
OpenShift Container Platform (OCP) |
自社データセンター / クラウド |
楽天モバイルが使っているのがこれ。自社インフラに完全インストールして使う、最も本格的な版 |
| OpenShift Dedicated |
AWS / GCP 上 |
クラウド上にRed Hatが管理するOpenShiftクラスタを用意。インフラ管理をRed Hatに任せたい場合 |
ROSA (Red Hat OpenShift on AWS) |
AWS 上 |
AWSと共同管理するOpenShift。AWSユーザーが手軽にOpenShiftを始める場合 |
OpenShift Local (旧CodeReady Containers) |
個人のPC上 |
開発者が自分のPCでOpenShiftを試すための小さな版 |
| OKD |
自社サーバー |
OpenShiftのオープンソース版(無料)。サポートなしでいい場合。コミュニティ版。 |
💡 楽天モバイルが使っているのは OpenShift Container Platform(OCP)
自社の5万台以上のサーバーに OpenShift をインストールし、完全に自社管理しています。これが最も本格的・高機能な使い方です。
❓ よくある疑問
Q. OpenShift の中で使われている K8s は、普通の K8s と同じもの?
基本的には同じ K8s がベースになっていますが、Red Hat が独自に修正・最適化したバージョンが使われています。
そのため、通常の kubectl コマンドはそのまま使えますが、OpenShift 独自の oc(OpenShift CLI)というコマンドも追加されています。
ただし K8s の中でも「SCC(セキュリティコンテキスト)」などの制約が追加されているため、素のK8sで動いていたコンテナが OpenShift では動かないことがあります。
Q. EKS(Amazon)や GKE(Google)とは何が違うの?
EKS / GKE / AKS はクラウド各社が提供する「マネージド Kubernetes」です。K8sをクラウド上で管理してくれるサービスで、OpenShiftとは別物です。
EKS(AWS):AWS上で動く素のK8s管理サービス。OpenShiftの機能は付いていない。
OpenShift on AWS(ROSA):AWS上でOpenShiftを動かすサービス。企業向け機能付き。
つまり「どこで動かすか(クラウド vs 自社)」と「何を動かすか(K8s vs OpenShift)」は別の軸の話です。
Q. Ansible(アンシブル)ってよく Red Hat と一緒に聞くけど何?
Ansible は Red Hat が買収したIT自動化ツールです。K8s / OpenShift とは別のツールですが、よく組み合わせて使われます。
Ansible の役割:サーバーの初期設定・ソフトウェアのインストール・設定変更などを自動化するツール。
「1000台のサーバーに同じ設定をする」というような作業を、コードを書くだけで自動化できます。
OpenShift + Ansible を組み合わせると「サーバー構築の自動化」から「K8s上のアプリ運用の自動化」まで一貫して対応できます。楽天モバイルでも使われています。
Q. OpenShift は高いと聞くが、どのくらいかかるの?
Red Hat のサブスクリプションは、コア数・ノード数などに応じた年間契約です。価格は非公開で規模によって交渉になりますが、一般的に「数百万〜数千万円/年」の規模感です(大企業向けは億単位も)。
一方で「サポートに頼れる安心感」「自前で構築するエンジニアコストの削減」「インシデント時の損失リスク低減」などを加味すると、通信・金融・医療では十分にペイするという判断がされています。
楽天モバイルのような5万台規模では、自前でK8sを運用するエンジニアを揃えるコストより、OpenShiftのライセンス+サポートを使う方が合理的とも言えます。
Q. 「Operator(オペレーター)」って何?
Kubernetes の拡張機能のひとつで、「アプリの運用を自動化するロボット」のようなものです。Red Hat / OpenShift で特に発展した概念です。
たとえばデータベース(PostgreSQL)を K8s 上で運用するとき、通常は人間が
・バックアップの設定
・バージョンアップ
・障害時のフェイルオーバー
…などを管理します。
Operator はこれらを「K8sの仕組みを使って自動化するプログラム」です。「PostgreSQL Operator を入れれば、あとは全自動で管理してくれる」というイメージです。
Red Hat の「OperatorHub」には数百種類の Operator が公開されており、OpenShiftユーザーはすぐに利用できます。