国内通信キャリア4社 市場規模マッピングレポート

世界の市場規模(国別・産業別)と日本の産業別市場規模を俯瞰したうえで、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの各社が通信事業の外側で広げる金融・EC事業の規模を、対象産業全体の市場規模と重ねて可視化する。ブロックの面積が市場規模(金額)に比例する。

作成日: 2026年7月11日 / 数値は各社決算資料・官公庁統計・民間調査レポートに基づく概算値(出典は末尾に記載)
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世界の市場規模マッピング

まず全体感として、世界経済における国別の規模と、主要産業の世界市場規模を面積で比較する。

世界の名目GDP(国別・上位20カ国+その他)

2025年 IMF推計・単位:兆米ドル/世界合計 約118.2兆ドル。ブロックにカーソルを合わせると詳細値を表示。

世界の産業別市場規模(20業界)

各種調査機関の推計・基準年が異なる独立推計のため合算はできない相対的な規模感の参考値(単位:兆米ドル)
世界の金融サービス市場(約22兆ドル)は通信(約1.7兆ドル)の10倍以上の規模で、小売・不動産・保険と並ぶ最大級の産業。通信各社が金融領域に進出する動機(市場の大きさ)を裏付ける一方、半導体・医薬品と並び通信は世界の主要産業の中では相対的に小さい部類に入る。
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日本の産業別市場規模マッピング

世界の産業別市場規模と同じ形式で、国内主要20業界の市場規模を面積で比較する。そのうえで、通信・金融(銀行)・EC・保険という各産業の内側に、通信キャリア各社がどれだけの規模を占めているかを色付きブロックで重ねて示す。

日本の産業別市場規模(20業界)

業界動向サーチ調べ・上場企業売上高集計ベース(2021〜2022年度)/単位:兆円。カテゴリ間で一部重複を含む参考値。ブロックにカーソルを合わせると詳細値を表示。
ドコモ:通信→金融へ展開 KDDI:通信→金融へ展開 ソフトバンク:通信→金融へ展開 楽天:小売(EC)→通信へ参入(逆方向)
卸売・電気機器・総合商社が上位を占める中、通信(約31兆円)・銀行(約25兆円)は中位の規模。通信キャリア各社が本業以外で狙う金融・ECは、通信市場そのものより大きな産業であることがわかる。矢印は各社の展開方向を示し、楽天だけが逆方向(小売・金融が本業で通信に新規参入)である点が他3社と対照的。

① 国内通信市場 22.3兆円(総務省)の内訳

2024年度・MNO4社の決算開示ベース売上高(グループ計)
通信市場はほぼ4社寡占。ここで積み上げた収益基盤を原資に、各社は次の一手として金融・EC等の非通信領域へ投資を振り向けている。

② 国内銀行業 43.8兆円(経常収益・2023年度)の中の「通信系金融」

ドコモ/ソフトバンク/楽天の金融事業収益の合計を、銀行業界全体に対する面積比で表示(KDDIは決済取扱高ベースのため別掲)
通信系金融3社 合計 約1.87兆円 = 銀行業界全体の約4.3%
ドコモ(金融・決済収益)4,483億円
ソフトバンク(ファイナンス事業売上高)4,045億円
楽天(フィンテック事業売上収益・推計)10,181億円
合計18,709億円
※KDDI(auじぶん銀行・au PAY等)は決済・金融取扱高で年8.1兆円規模(2023年度上期実績、通期は非開示)。収益ベースでの単独開示がないため上記合計には含めていない。

③ 国内BtoC-EC市場 26.1兆円(経済産業省・2024年)の中の「楽天」

楽天グループの国内EC流通総額(楽天市場・楽天ブックス・楽天ビューティ等含む)
楽天の国内EC流通総額 5兆9,550億円 = EC市場全体の約22.8%

ドコモ・KDDI・ソフトバンクはEC「プラットフォーム」としての直接参入規模は僅少で、d払い・au PAY・PayPayなど決済インフラとしてEC取引に関与する形にとどまる。楽天のみがEC事業者として市場の約4分の1を占める唯一の通信系プレイヤー。

④ 参考:国内損害保険市場 9.1兆円(正味収入保険料・2022年度)

通信キャリア4社の保険事業(au損保・ソフトバンク系保険代理店等)は現状いずれも小規模で、収益開示上有意な規模のセグメントを構成していない。
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通信4社の多角化事業規模比較

通信事業で得た顧客基盤・キャッシュフローを原資に、各社が金融・決済領域でどれだけの事業規模を築いているかを直接比較する。

通信キャリア売上高の推移(2020→2024年度)

単位:兆円/ドコモ・KDDI・ソフトバンクはグループ連結売上高、楽天はモバイルセグメント売上収益

売上高の伸び率(2020年度=100として指数化)

絶対額の差が大きい4社を同じ軸で比較するため、2020年度を100とした成長指数で表示
大手3社が5年間で+6〜26%の緩やかな成長にとどまる一方、楽天モバイルは同じ5年で売上が約3.1倍(指数306)に急拡大。絶対額ではまだ大手3社の10分の1以下だが、伸び率では突出している。

金融事業の決済・金融取扱高

単位:兆円/各社ともIR開示の取扱高(GMV)ベース。会計基準・対象期間が異なる点に留意(注記参照)

金融事業の売上収益(開示ベース)

単位:億円/セグメントとして収益開示している3社のみ比較(KDDIは金融事業単独の収益非開示)

グループ全体売上高に対する非通信(金融・EC等)事業の位置づけ

会社グループ売上高通信事業金融・決済EC・その他成長領域ポジショニング
NTTドコモ6兆2,131億円約4兆9,800億円4,483億円スマートライフ他 約7,800億円通信本業が主軸、金融は成長エンジンの一つ
KDDI5兆9,180億円大部分非開示(取扱高8.1兆円)エネルギー・ローソン等含む非通信事業拡大中金融含む非通信事業を積極拡大、開示は粗い
ソフトバンク6兆5,443億円約5兆円台後半4,045億円流通・メディア等含むPayPay統合で金融が急成長・黒字化達成
楽天グループ2兆2,792億円4,407億円(モバイル)10,181億円(推計)8,204億円(インターネットサービス=EC等)通信が最小セグメント、EC・金融が主力の逆転構造
4社の中で唯一、楽天グループだけは「通信が金融・ECを支える」のではなく「金融・ECが稼ぎ頭で、通信(モバイル)は後発の一事業」という逆の資本構造になっている。ドコモ・ソフトバンクは通信本業の収益基盤の上に金融事業を数千億円規模まで育てた段階、KDDIは金融事業の開示粒度が粗いものの取扱高ベースでは急拡大局面にある。