Salesforce×楽天グループ 取引実績とtoBeマーケティングの関係
楽天グループ(EC/金融/モバイル)とSalesforceの取引実績・歴史変遷、およびtoBeマーケティング株式会社の関与について公開情報を調査
本ページはすべて公開Web情報(ニュース記事・求人票・企業公式サイト・プレスリリース)に基づく調査であり、各社の非公開契約内容・正式な取引金額・契約範囲は反映されていない。
エグゼクティブサマリー
- 楽天グループとSalesforceの間に資本提携・包括的パートナーシップ契約は確認できず、基本的には「楽天がSalesforceライセンスを購入し内製でシステムを構築・運用するユーザー企業」というベンダー・カスタマー関係。
- 最も関係が深いのはEC(楽天市場)領域。出店者管理CRM・SFA・コールセンターシステムをSalesforce基盤(Sales Cloud/Service Cloud/Experience Cloud)で内製構築し、社内に専任のSalesforceエンジニア・アーキテクトチームを抱える「国内有数のSalesforceユーザー」。
- 一方、2020年12月に発生した最大148万件規模の個人情報漏えい事故(楽天・楽天カード・楽天Edyが対象、Experience Cloudのアクセス権限設定不備が原因)はNISCが名指しで注意喚起を出すほどの重大インシデントとして知られる。
- 金融領域は製品が混在。楽天生命保険はSalesforceではなくMicrosoft Dynamics CRM Online(日立ソリューションズ支援、2015年8月稼働)を採用しており、「楽天グループ=オールSalesforce」ではない。
- 楽天モバイルは自社開発のクラウドコンタクトセンター「楽天コネクト Storm」が主力で、Salesforceは連携可能な外部CRMの一つという位置付けにとどまる。
- 逆方向の関係として、楽天Payが Salesforce B2C Commerce Cloud向け決済カートリッジとしてAppExchangeに提供されており、楽天は技術パートナーとしてもSalesforceエコシステムに関わる。
- toBeマーケティング株式会社は2023年12月より富士通の完全子会社(Salesforce Marketing Cloud/Account Engagement国内シェアNo.1)。楽天グループとの既存取引を示す公開情報はないが、富士通グループ内にSalesforce MAの実行部隊を持つに至った意味は大きい(詳細後述)。
1. Salesforce×楽天グループ 関係の全体像
| 項目 | 内容 |
| 関係の性質 | 資本提携なし。楽天グループが顧客としてSalesforceライセンスを購入し、社内エンジニアリング組織が内製でCRM/SFA/コンタクトセンター基盤を構築・運用 |
| 主な利用領域 | 楽天市場(EC)の出店者向けCRM・SFA・コールセンターシステム |
| 組織体制 | 「Salesforceコンサルタント・エンジニア」「Salesforceアーキテクト」等の専任ポジションが複数存在(コマースカンパニービジネスサポート開発部、コーポレート情報技術部など) |
| 規模感 | 求人票の表現では「国内有数のSalesforceユーザー」「多くのSFDC組織を運用」「他楽天グループSalesforceとの連携」など、複数のSalesforce組織(マルチオーグ)が存在することが示唆される |
| 経営層の関係 | 2018年4月「新経済サミット」にて三木谷浩史氏(楽天会長兼社長)とマーク・ベニオフ氏(Salesforce会長兼CEO)が対談。内容はSalesforceの経営戦略・日本市場観が中心で、資本・業務提携への具体的言及はなし |
| 逆方向の連携 | 楽天Pay(オンライン決済)がSalesforce B2C Commerce Cloud向けカートリッジとしてAppExchangeに掲載。楽天が決済インテグレーションの提供側としてSalesforceエコシステムに参加 |
2. 事業ドメイン別の取引実績
2-1. EC(楽天市場)
楽天市場の出店者向けCRM顧客管理システム/SFA/コールセンター向けシステムをSalesforce基盤(Sales Cloud、Service Cloud、Experience Cloud)で構築・運用。求人票(Green、Workday採用ページ、doda等)に繰り返し登場する記述であり、社内開発体制として定着している(コマースカンパニービジネスサポート開発部 ECビジネス・エンパワーメント課=CCBD、コーポレート情報技術部=CITDなど)。Salesforce公式の顧客事例ページにも「楽天Edy」が掲載されている。
2020年12月の個人情報漏えい事故:クラウド型営業管理システム(Salesforce Experience Cloud)のアクセス権限設定不備により、2016年1月〜2020年11月の間、ゲストユーザーでも参照可能な状態が発生。楽天・楽天カード・楽天Edyの3社合計で最大148万6291件(楽天単独で最大138万1735件、うち実被害208件)の事業者情報(企業名・店舗名・住所・代表者名・電話番号・メールアドレス等)が流出した可能性ありと発表。同時期にPayPayでも同種の事故が発生し、NISCが「Salesforce」利用企業全体に注意喚起を出す事態に発展した(2021年2月)。
2-2. 金融(楽天カード/楽天銀行/楽天証券/楽天生命/楽天損保)
| 会社 | 状況 |
| 楽天カード | 2020年情報漏えい事故の当事者の一つ(事業者向けビジネスローン申込者情報が対象)。独自のSalesforce導入事例を示す公開情報は限定的 |
| 楽天銀行 | プレスリリースにSalesforceとの連携に関する記述があるが、具体的な導入プロジェクトの詳細は非公開 |
| 楽天証券 | Salesforce導入を示す公開情報は見つからず。Splunk(マクニカネットワークス支援)、NICE Actimize(AMLソリューション)などSalesforce以外のベンダーとの取引が目立つ |
| 楽天生命保険 | 2015年8月に代理店向けクラウド型営業支援システムを本稼働。採用製品はMicrosoft Dynamics CRM Online(日立ソリューションズ支援)であり、Salesforceではない |
| 楽天損保 | 楽天生命との生損保一体型基幹システム構築が進行中(2023年11月〜、ベンダーはSimplex)。Salesforceへの言及は確認できず。金融庁からの報告徴求命令が出るなど刷新は難航中と報道 |
小括:楽天グループの金融セグメントは、EC領域ほどSalesforceへの依存度が高くない。会社ごとに異なるベンダー(Salesforce/Microsoft/Simplex等)を採用しており、グループ横断でのSalesforce統一基盤化は進んでいないとみられる。
2-3. モバイル(楽天モバイル)
楽天モバイルは自社ブランドのクラウドコンタクトセンターサービス「楽天コネクト Storm」を展開しており、これが法人向け・自社向けの主力コンタクトセンター基盤となっている。楽天コネクト StormはSalesforceを含む外部CRM/UC/WFM製品と連携可能という位置付けであり、Salesforceは「Stormの連携先の一つ」に過ぎない。楽天モバイルがSales CloudやService Cloudを法人営業・カスタマーサポートの基幹として全面導入しているという公開情報(プレスリリース・導入事例等)は確認できなかった。法人契約数は2024年時点で1万社超と拡大しているが、それを支えるCRM基盤の詳細は非公開。楽天Symphony(通信インフラ輸出事業)とSalesforceの関係についても公開情報からは確認できず。
3. 取引の歴史変遷
2000年代後半〜
楽天市場の出店者向けCRM/SFA基盤としてSalesforceの利用開始(正確な導入年は非公開。求人票からは長期にわたる内製運用体制が確認できる)
2015年8月
楽天生命保険が代理店向け営業支援システムを本稼働(※Salesforceではなく Microsoft Dynamics CRM Online、日立ソリューションズ支援)
2016年1月〜2020年11月
楽天市場CRM(Experience Cloud)でアクセス権限設定の不備が発生していた期間
2018年4月
新経済サミットで三木谷氏とベニオフ氏が対談(経営者間の関係性を示すが、資本業務提携ではない)
2020年12月25日
楽天・楽天カード・楽天Edyで最大148万件規模の情報漏えいの可能性を公表。原因はSalesforce Experience Cloudの設定不備
2021年2月
NISCがSalesforce利用企業(楽天・PayPay等)に設定見直しの注意喚起を発出
2023年11月6日
富士通がtoBeマーケティングの全株式取得の株式譲渡契約を締結(詳細は4章)
2023年12月〜
toBeマーケティングが富士通グループの一員として事業活動を開始、完全子会社化
継続中
楽天市場のCRM/SFA/コールセンターシステムはSalesforce基盤での内製開発・運用が継続。求人は現在も継続的に出稿されている
4. toBeマーケティング株式会社との関係
4-1. 会社概要(2026年7月時点)
会社概要
| 設立 | 2015年6月(前身は2014年設立の2BC株式会社からの事業分社) |
| 代表 | 小池智和 |
| 本社 | 東京都中央区京橋 |
| 従業員数 | 約90〜93名 |
| 資本関係 | 2023年11月6日、富士通株式会社が全株式取得の株式譲渡契約を締結。2023年12月より富士通の完全子会社。ブランドは「toBeマーケティング, a Fujitsu company」に変更 |
| 事業内容 | Salesforce Marketing Cloud Engagement/Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)の導入・活用支援で国内シェアNo.1。2,000社以上の導入支援実績、Salesforce Partner Award 4年連続受賞 |
4-2. 富士通による買収の背景・狙い
- 富士通はSFA/CRM領域には強みを持つ一方、MA(マーケティングオートメーション)領域のケイパビリティが薄く、「自分たちで一からつくりあげるイメージを持てなかった」(富士通側コメント)ことがM&Aの動機
- toBeマーケティングのMAの強みと富士通のSFA/CRMの強みを組み合わせることで、「Salesforce Customer 360」の全方位提供(マーケティング・セールス・カスタマーサポートを横断するデジタルビジネス支援)を狙う
- 2024年のSalesforce World Tour Tokyoでは、富士通×toBeマーケティングの共同セッションで「コンタクトセンター×MA」「セールス×Data Cloud×MA」という提案モデルが紹介されており、買収後は富士通の既存顧客基盤に対してtoBeマーケティングのMA機能をクロスセルする動きが実際に進んでいる(AIによるセグメント作成時間50%削減、メール開封リードタイム74%削減などの実績を訴求)
4-3. 楽天グループとの関係についての調査結果
今回の調査範囲では、toBeマーケティング(および富士通)と楽天グループとの直接的な取引・導入事例を示す公開情報は確認できなかった。Salesforce World Tour Tokyo 2024のセッションレポートにも楽天への言及はなし。toBeマーケティング公式サイトの導入事例一覧・ニュースリリースにも楽天グループ各社の名前は登場しない。保険業界向け事例として「Marketing CloudとPersonalizationで100万人の顧客にパーソナライズ体験を提供し、保険契約の継続率を向上」という事例が存在するが、企業名は非公開(会員限定コンテンツ)。楽天生命は前述の通りMicrosoft Dynamics CRMを採用しているため、この事例が楽天生命である可能性は低い。
4-4. なぜSalesforce担当者はこの文脈でtoBeマーケティングの名前を出したのか(考察)
仮説1:クロスセルの打診(最も可能性が高い)
Salesforce側からすると、富士通は「SFA/CRMは強いがMAが弱い」会社だったが、2023年末のtoBeマーケティング買収で自社グループ内にMA国内No.1パートナーを持つに至った。楽天グループ(特に金融・保険セグメント)はSalesforce導入が手薄な領域であり、Salesforce担当者としては「富士通が本気で楽天にSalesforce案件を取りに行くなら、グループ内のtoBeマーケティングを使えばMarketing Cloud/Data Cloud込みの提案ができるはず」という前提で名前を出した可能性が高い。これはSalesforce社にとっても自社製品の拡販(Customer 360全方位提供)に直結するため、Salesforce側にもtoBeマーケティングを勧めるインセンティブがある。
仮説2:競合牽制・探り
楽天グループの中でSalesforceが本格導入されていない金融・保険領域に、富士通が自社グループのtoBeマーケティング経由でSalesforce製品を提案してくる可能性をSalesforce側が想定し、協業の芽を探るための発言だった可能性。
仮説3:非公開の実案件(根拠は薄い)
toBeマーケティングが現在進行形で楽天グループのどこかとSalesforce MA導入プロジェクトを進めている可能性はゼロではないが、本調査では裏付ける公開情報は一切見つからなかった。
推奨アクション:次にSalesforce担当者と話す機会があれば、「toBeマーケティングと楽天の間に何か具体的な案件・実績があるのか、それとも一般論としてグループシナジーの話をしているのか」を直接確認するのが最も確実。あわせて社内(toBeマーケティング側、または富士通のSalesforceアライアンス担当部署)に、楽天向けの提案実績や商談状況を確認することを推奨する。
5. 情報源の限界
- 本ページはすべて公開Web情報(ニュース記事、求人票、企業公式サイト、プレスリリース)に基づく。各社の非公開契約内容、正式な取引金額、契約範囲は反映されていない。
- Salesforce公式の「楽天Edy」導入事例ページ本文はアクセス制限(403)により詳細を取得できなかった。
- toBeマーケティングの導入事例一覧ページはJavaScriptでの動的表示のため、機械的な内容取得ができなかった。
営業活動への示唆
示唆
- 楽天グループはEC以外の金融・モバイル領域でSalesforceの浸透度が低いため、楽天カード・楽天銀行・楽天証券・楽天生命・楽天モバイルへの新規提案余地がある。特に楽天生命はMicrosoft Dynamics CRMを使用中であり、リプレース/併用提案の切り口になり得る
- 2020年の情報漏えい事故はネガティブな引き合いになり得る一方、「Salesforce自体の欠陥ではなく設定運用の問題だった」という整理をした上で、Trust/セキュリティガバナンス強化の提案文脈に転換できる
- 楽天Payの Commerce Cloud カートリッジ提供という技術パートナー関係は、楽天を「顧客」だけでなく「エコシステムパートナー」として扱う関係構築の材料になり得る
- toBeマーケティングは富士通の完全子会社(2023年12月〜)。楽天との既存取引は未確認だが、自社グループの資産として楽天の金融・保険セグメント(Salesforce未浸透)にMarketing Cloud/Data Cloud提案を仕掛ける材料になり得る。Salesforce担当者の発言の真意は直接確認し、toBeマーケティング側にも楽天との接点有無をヒアリングすることを推奨する
参考情報源