IT Sales Guide — Contact Center / CX Platform

Genesys 完全解説
〜コンタクトセンター基盤・富士通との関係〜

Genesysのシステム構造・製品ライン・AI機能・クラウドシフト・富士通パートナーシップを網羅

Genesys コンタクトセンター / CX CCaaS / クラウド ACD / IVR / オムニチャネル 富士通パートナー
1Genesys とは
Genesysとは:コンタクトセンター(コールセンター)および顧客体験(CX:Customer Experience)基盤を提供する世界最大手のソフトウェアベンダー。1990年に米国で創業。現在はGenesys Cloud CXを中心にクラウドネイティブなCXプラットフォームを展開している。Gartner Magic Quadrantの「CCaaS(Contact Center as a Service)」部門で長年リーダーに位置付けられる。
1990年
米国カリフォルニア州で創業
100カ国以上
グローバル展開拠点数
8,000社以上
グローバル導入企業数
コンタクトセンター基盤ベンダーとしての位置付け
コンタクトセンター(CC)とは:電話・メール・チャット・SNS・ビデオなど複数のチャネルで顧客対応を行う組織・システム。かつては「コールセンター(電話のみ)」と呼ばれたが、現在は複数チャネルを統合した「コンタクトセンター」が主流。Genesysはその基盤システムを提供する。
役割内容Genesysでの位置
チャネル統合 電話・チャット・メール・SNS・ビデオを1つの基盤で管理 Genesys Cloud CXのオムニチャネルルーティング
インテリジェントルーティング お客様の問い合わせを最適なエージェントへ自動振り分け ACD(自動着信分配)+ AIによる予測ルーティング
エージェント支援 応対画面・CRM連携・AI提案で対応品質を向上 エージェントデスクトップ・Agent Copilot
CX分析・改善 通話録音・品質管理・KPI分析・予測 Analytics・WFM・品質管理モジュール
2製品ライン(3系統)
☁️ Genesys Cloud CX(旧:PureCloud)主力・推奨
AWS上で動くクラウドネイティブなオールインワンCXプラットフォーム。2015年に登場し、現在Genesysの主力製品。マイクロサービスアーキテクチャで構築されており、高い拡張性と可用性を持つ。中小規模から大企業まで対応。

クラウド専用 サブスクリプション オムニチャネル AI標準搭載 オープンAPI
🏢 Genesys Engage(旧:PureEngage)大規模エンタープライズ向け
オンプレミス・クラウド・ハイブリッドに対応する大規模エンタープライズ向けプラットフォーム。数千席〜数万席規模のコールセンターを持つ銀行・通信・保険業界に採用。高度なカスタマイズが可能な反面、導入・運用コストは高い。Genesysは現在EngageからCloud CXへの移行を推進中。

オンプレ/ハイブリッド対応 大規模(1,000席以上) 移行推奨フェーズ
🔗 Genesys PureConnect(旧:CIC / Interactive Intelligence)レガシー移行対象
2016年に買収したInteractive Intelligenceの製品。UCとコンタクトセンターを統合したオールインワン製品。日本でも多くの企業が導入している。Genesysはサポート継続しているが、Cloud CXへの移行を推奨。

UC統合 オンプレ中心 移行フェーズ
製品戦略の方向性:Genesysは全製品をGenesys Cloud CXに集約する方針。EngageとPureConnectのユーザーをCloud CXへ移行させることがGenesys・パートナー双方のビジネスの柱になっている。「移行案件」は今後5〜10年の大きな商機。
3システムアーキテクチャ
Genesys Cloud CX アーキテクチャ全体像(6層構造)
① チャネルレイヤー(お客様が接触するすべての窓口)
電話(PSTN/SIP) Webチャット メール SMS LINE / Twitter / Facebook ビデオ通話 AIボット
顧客がどのチャネルから問い合わせてきても、同一の基盤で受け付ける。チャネルをまたいだ対応履歴を統合管理(オムニチャネル)。
② ルーティングエンジン(ACD:Automatic Call Distribution)
スキルベースルーティング 優先度制御 待ち時間予測 AIによる予測ルーティング
問い合わせ内容・顧客プロフィール・エージェントのスキル・待ち時間などを総合的に判断し、「最適なエージェント」に自動振り分けするエンジン。ここがコンタクトセンター基盤の心臓部。
③ エージェントデスクトップ(オペレーター作業画面)
統合作業画面 CRM連携(Salesforce / SAP) 通話録音 Agent Copilot(AI支援) コールバック・保留
エージェント(オペレーター)が使う統合作業画面。顧客情報・対応履歴・AIからの提案が1画面に集約。WebRTCで音声通話もブラウザ内で完結。
④ AI・ボットレイヤー(Genesys AI)
Genesys Dialog Engine(音声IVR) Genesys Web Messaging(チャットボット) Agent Copilot(リアルタイム支援) Predictive Engagement(行動予測)
自動応答から人間への引き継ぎまでをAIが制御。会話AI・感情分析・次のアクション提案などを提供。外部AI(Google CCAI・Amazon Lexなど)との統合も可能。
⑤ 分析・管理レイヤー(Analytics & WFM)
リアルタイムダッシュボード 履歴レポート 品質管理(QM) WFM(シフト最適化) Speech Analytics(通話分析)
コンタクトセンターの運営に必要なKPI(SL・AHT・FCR等)をリアルタイムで可視化。WFMでは需要予測に基づくシフト自動作成が可能。
⑥ インフラレイヤー(AWS上のマイクロサービス基盤)
AWS(複数リージョン) マイクロサービス WebRTC(音声) Open API(REST) App Foundry(マーケットプレイス)
Genesys Cloud CXはAWS上に構築されたマイクロサービスアーキテクチャ。可用性99.99%。Open APIにより外部システムとの連携が容易。App Foundryで300以上のサードパーティ統合が利用可能。
IVR(Interactive Voice Response)の構造
IVRとは:「〇〇は1番を、△△は2番を押してください」という自動音声応答システム。お客様の電話を受け付け、用件を振り分けてエージェントに繋ぐ前の「自動フィルター」として機能する。
IVRの種類仕組みGenesysでの名称
プッシュ型IVR 電話のボタン(DTMF)で選択肢を選ぶ従来型 Architect(フロー設計ツール)
音声認識IVR 「修理の申し込みです」などの発話をAIが認識してルーティング Genesys Dialog Engine Bot Flows
セルフサービス型 残高照会・予約変更などをエージェント不要で完結 IVRセルフサービスフロー
4主要機能
コンタクトセンター運営の主要KPIとGenesysの対応機能
KPI(指標)意味関連Genesys機能
SL(Service Level) 〇秒以内に応答した割合(例:20秒以内80%) リアルタイムダッシュボード・WFMによる人員最適化
AHT(Average Handle Time) 平均対応時間(通話時間+後処理時間) Agent Copilot・ナレッジベース連携で短縮
FCR(First Call Resolution) 初回問い合わせで解決できた割合 スキルベースルーティング・CRM連携で向上
CSAT(Customer Satisfaction) 顧客満足度スコア After-Call Survey・Speech Analytics
放棄率(Abandon Rate) 待ち時間が長くて電話を切った割合 コールバック予約機能・待ち時間通知
稼働率(Occupancy) エージェントが実際に対応に費やした時間の割合 WFM・スキル管理・リアルタイム監視
WFM(Workforce Management)
WFMとは:コンタクトセンターの人員を最適に配置するための需要予測・シフト管理・スキル管理システム。「何時に何人のエージェントが必要か」を予測し、最適なシフトを自動生成する。
機能内容
需要予測過去データからコール数を予測。季節・曜日・キャンペーンを考慮
シフト最適化予測に基づき最小コストで必要カバレッジを確保するシフト自動生成
スキル管理エージェントのスキル・習熟度を管理しルーティングに反映
リアルタイム監視計画vs実績の乖離をリアルタイム表示し、即座に対応
オムニチャネルの仕組み
オムニチャネルとは:「電話→チャット→メール」と顧客がチャネルを変えても、対応履歴が引き継がれシームレスに対応できる状態。Genesysはすべてのチャネルを単一ルーティングエンジンで管理することで実現する。
マルチチャネルとの違い:単に複数チャネルを持つだけなら「マルチチャネル」。チャネルをまたいで顧客情報・対応履歴が統合されて初めて「オムニチャネル」。多くの企業がマルチチャネル止まりで、オムニチャネル化がGenesys導入の主要な動機になる。
5AI・生成AI機能(Genesys AI)
Genesys AIの方針:Genesysは「Experience Orchestration」(体験のオーケストレーション)をビジョンに掲げ、AIをすべての機能レイヤーに組み込む戦略。単なるチャットボットではなく、ルーティング・エージェント支援・品質管理・予測まですべてをAIで高度化している。
Genesysの主要AI機能一覧
機能名内容効果
Predictive Routing
(予測ルーティング)
顧客の属性・過去の行動・リアルタイムのコンテキストを分析し、最も解決率の高いエージェントへ自動振り分け FCR向上・CSAT改善・AHT短縮
Agent Copilot
(エージェント支援AI)
通話内容をリアルタイムで文字起こしし、関連ナレッジ・次のアクション提案・要約を自動表示 AHT短縮・新人エージェントの即戦力化
AutoSummary
(自動要約)
対応終了後に会話内容を自動で要約し、後処理(ACW)を自動化 後処理時間を大幅削減
Predictive Engagement
(行動予測)
Webサイト訪問者の行動を分析し、離脱しそうなタイミングでチャットを自動表示 プロアクティブな顧客接触・CVR向上
Sentiment Analysis
(感情分析)
通話・チャット中の顧客感情をリアルタイム判定。クレーム化前にエスカレーション クレーム抑制・エスカレーション精度向上
Voice Bot / Chat Bot
(会話AI)
自然言語処理でFAQ対応・予約・照会をセルフサービス化。エージェントへの引き継ぎも自然 問い合わせ件数の削減・24時間対応
外部AI・LLMとの連携
GenesysはGoogle CCAI・Amazon Lex・OpenAI GPTなどの外部LLMとの統合をサポートしている。「Genesysがチャネル統合・ルーティング・エージェント管理を担い、会話AIは外部LLMを活用する」という構成が増えている。富士通のAI(Fujitsu Kozuchi等)との組み合わせも技術的に可能。
6業界のクラウドシフトとGenesysの戦略
CCaaS(Contact Center as a Service)への移行トレンド
CCaaSとは:コンタクトセンター基盤をクラウドサービスとして提供するモデル。従来のオンプレミスPBX+コールセンターシステムから、クラウド上のSaaSに移行する流れが世界的に加速している。
比較項目従来型(オンプレ)CCaaS(Genesys Cloud CX)
初期投資大(サーバー・PBX・回線工事)小(契約のみ)
コスト構造CAPEX中心(減価償却)OPEX中心(サブスクリプション)
拡張性低(席数変更に工事が必要)高(管理画面から即時変更)
機能更新バージョンアップに費用・時間自動更新(常に最新機能)
在宅対応困難(VPN・セキュリティ課題)容易(ブラウザのみで稼働)
AI機能後付け・統合が複雑標準搭載・API連携が容易
オンプレ→クラウド移行の典型パターン
現状:Genesys Engage / PureConnect / 他社レガシーPBX
オンプレ設備の老朽化・サポート終了・コロナ禍での在宅対応困難が移行のトリガーになることが多い
↓ 移行プロジェクト(6ヶ月〜2年)
移行後:Genesys Cloud CX
既存のCRM・基幹システムとAPI連携。既存の番号・IVRフローの移行設計が移行プロジェクトの肝
移行の難しさ:既存IVRのフロー定義・番号ポータビリティ・CRM連携の再設計が複雑。大規模センターほど移行期間が長く、段階的移行(並行稼働)が必要になる。富士通のような大手SIerが価値を発揮するのがここ。
7富士通とGenesysの関係

🔴 富士通はGenesysの「プレミアパートナー」

富士通はGenesysの日本における最大級のパートナーの1つ。コンタクトセンターソリューション分野において、Genesysプラットフォームをベースに「構築・導入・カスタマイズ・運用保守・マネージドサービス」まで一貫提供する体制を持つ。

富士通 × Genesys の協業モデル
役割富士通の担当範囲Genesysとの関係
販売(リセール) Genesys Cloud CX / Engageのライセンスを顧客へ販売 GenesysからライセンスをOEM/再販
導入・設計(SI) コンタクトセンターの設計・構築・CRM連携・IVRフロー設計 Genesys製品の認定エンジニアが実装
カスタマイズ開発 Genesys Open APIを使った顧客固有の機能開発・既存システム統合 Genesys SDKを活用したアドオン開発
マネージドサービス 構築後の運用監視・ヘルプデスク・バージョン管理を代行 Genesys基盤の運用を富士通が継続担当
移行支援 レガシーシステム(旧Genesys Engage・他社PBX)からCloud CXへの移行 移行ツール・方法論の提供(Genesys提供)
富士通がGenesysを選ぶ理由
グローバル標準への対応:
富士通が支援する大手企業は多くがグローバル展開している。Genesysの100カ国以上のプレゼンスと多言語対応が、グローバル統一基盤の要件に合致する。
製品の完成度・信頼性:
GartnerのCCaaSリーダー。金融・通信・保険などの規制業種での実績が豊富。富士通の顧客層(大手日本企業)のニーズに合っている。
オープンAPIの拡張性:
富士通の得意とする「基幹系との連携」「業界特化の作り込み」に対応できるAPI仕様の充実。富士通独自システムとの統合が技術的に実現しやすい。
富士通のGenesys関連サービス(具体例)
FUJITSU Intelligent Contact Center:
Genesys Cloud CXをベースに、富士通が独自の運用管理機能・日本語対応AI・SLA管理を付加したマネージドサービス。「プラットフォームはGenesys、運用は富士通」という提供モデル。
金融・通信向け特化提案:
銀行・保険・通信キャリアなど富士通の既存顧客向けに、コンプライアンス対応(録音保管・個人情報管理)を強化したGenesys導入パッケージを提供している。
AI連携:
富士通のAIプラットフォーム(Fujitsu Kozuchi)とGenesysを統合し、より高精度な日本語会話AIをコンタクトセンターに組み込む取り組みが進んでいる。
富士通営業がGenesys案件に関わる典型パターン
案件タイプ背景富士通の役割
オンプレ→Cloud移行 既存のGenesys Engage・Avaya・旧PBXのリプレイス 移行設計・CRM再連携・並行稼働管理・移行後の運用保守
新規CCaaS導入 新拠点開設・事業部門のDX化・テレワーク対応 要件定義〜構築〜研修〜運用まで一括請負
AI機能追加 既存Genesys環境にAIボット・Agent Copilotを追加 AI設計・学習データ整備・既存フローとの統合
グローバル統合 海外拠点を含む統合コンタクトセンター基盤の構築 グローバル設計・各国リソース調整・現地パートナー管理
8競合比較
主要CCaaSベンダー比較
ベンダー主力製品強み弱み
Genesys
本資料
Genesys Cloud CX 機能の網羅性・大規模実績・AI充実・オープンAPI コストが高め・設定の複雑さ
NICE inContact CXone 品質管理・WFMの機能が特に強い 日本市場では知名度が低い
Avaya Avaya Experience Platform 日本市場のオンプレ導入実績が豊富・PBXとの親和性 クラウド移行の遅れ・財務不安(2023年破産申請から再建中)
Amazon Connect Amazon Connect AWS完全統合・超低コスト・使った分だけ課金 標準機能が限定的・カスタム開発が必要
Salesforce Service Cloud Voice Salesforce CRM完全統合・既存顧客への展開しやすさ CC専用基盤ではない・大規模センターには不向き
Five9 Five9 Intelligent CX 中堅市場での価格競争力・Salesforce連携 日本での実績・サポートが限定的
日本市場での特徴:Genesys・Avaya・NTTグループ系の独自製品が三強。Avayaの経営不安を機にGenesysへの移行が増加中。Amazon Connectは「安く作れる」が売りだが、機能が限定的なため大規模センターには不向きで、Genesysとの住み分けが明確。
9IT営業としての商機

Genesys案件をIT営業に活かす

  • コンタクトセンターの老朽化(オンプレ5〜10年超)は確実に存在する。リプレイス提案の刈り取り先として有望
  • 「在宅対応・BCP強化」文脈でのCCaaS化需要はコロナ禍以降も持続
  • AI機能の追加(Agent Copilot・ボット)は既存Genesys導入済み顧客へのアップセル商機
  • 富士通との協業:富士通既存顧客のコンタクトセンター案件をGenesysベースで提案できる
  • CRM連携(Salesforce / SAP)が必要なケースでは周辺システム案件もセットで取れる
フェーズ別の商機マッピング
シグナル商機提案の切り口優先度
オンプレCC設備が7年超 / サポート終了予告 クラウド移行(Genesys Cloud CX) 「保守切れ前にクラウドへ。BCP・在宅も同時に解決」 最高
Avaya導入済み顧客(経営不安) Genesysへのリプレイス 「Avayaの先行きを考えると今がGenesys移行の最適タイミング」 最高
AI導入・DX化の号令 Agent Copilot・ボット追加 「既存Genesys環境にAIを乗せてAHT短縮・FCR向上」
コンタクトセンターのKPI悪化(放棄率・CSAT低下) WFM・ルーティング最適化 「WFMとAIルーティングでKPIを改善した事例を紹介」
新規コンタクトセンター開設 Genesys Cloud CX 新規導入 「最初からクラウドで構築し、CAPEX不要・スケール自在」
商談で使えるファクト
「御社のコンタクトセンターは現在何席ですか?現行システムの導入から何年経っているか確認させてください。7年を超えているシステムは保守コストが急上昇するタイミングです。Genesys Cloud CXに移行した場合の総所有コスト(TCO)比較を提示できます」
「Genesys Cloud CXはAgent Copilotが標準搭載されており、通話内容をリアルタイムで要約・提案してくれます。平均AHTを20〜30%短縮した事例もあります。エージェントの研修コスト削減にも直結します」
注意事項
コンタクトセンターの移行はリスクが高い
カットオーバー時に電話が繋がらなくなるリスクが直接クレームや機会損失に繋がる。「安く早く」より「安全確実な移行計画」を前面に出す方が刺さる。富士通の信頼性・実績がここで活きる。
IVRフロー設計は業務理解が必要
IVRの分岐設計はビジネスルールの塊。IT部門だけでなく、コンタクトセンターの運営担当者(業務部門)を巻き込まないと要件が出てこない。商談初期から業務部門へのアクセスを確保すること。